◇ 今回のクライアント ◇
 涼風 涼(すずかぜ りょう) 1971年11月4日、新潟市生まれ、職業は作家
◇ 症 状 ◇
 今年になって現在のマンションに引っ越してから、不思議なモノを頻繁に見るようになった。戸口に女性が立っていたり、いるはずのない猫がベランダを駆け抜けたり……。ベランダに猫が入り込めるような構造ではないのですが。

◇ 第一回目の診断
ホロスコープ  ぼくはいままであなたのことを、物静かな紳士だと思っていたけど、少なくともホロスコープで見るかぎり、それは本当のあなたではないんですね。安心しました(おいおい…)。これだけ過激な惑星配置も珍しい。占星術には"T型スクエア"という、ひとつの性格が極端にでてしまう型があるんですが、あなたの場合、水星、金星、火星、月という地球に大きな影響をあたえる惑星が、二つもこのT型スクエアを作っています。
 あなたの場合それが神経の鋭敏さと、ひとところに安住することを嫌う放浪癖になって現れやすいです。典型的な吟遊詩人ですね。きっと同じことをしていると、気分が滅入るのではないですか? ふだんのあなたの穏やかな物腰や、長編小説を書くねばりは、努力の賜なのですね。あなたの場合、冥王星がすばらしい位置にありますから、その加護もあるにちがいありません。
 そんなあなたですから、霊的な現象…そういうものがないとしても、ちょっとした電場や磁場の動き…には敏感なはずです。とにかく、知的な好奇心が旺盛なあなたのことですから、そうした妙な現象を楽しんでしまいましょう。
 へたなアドバイスはやめておきます。ただあなたは、あと数時間遅く生れていたら、希代の霊能者になったかもしれない惑星配置をしています。特に月と海王星の位置が。
 それから、あなたのホロスコープから、あなたのまわりで霊的な現象が起こりやすい――いいかえれば神経が鋭敏になりやすい――日時を計算してみました。10の候補を書いておきます。もしこのいずれかでそういうことが起こったら、詳しい分析ができるかもしれませんから、教えてください。
 4月21日の深夜(日付は22日の午前です。以下深夜という場合は、翌日の早朝までをふくめます)。4月29日の昼ごろ。5月5日の午後。5月11日の深夜。5月19日の昼間。5月26日の深夜。6月1日の深夜。6月8日の昼間。6月16日の早朝。6月22日の深夜。
 では、安らかな眠りを。


◇ クライアントの返答
 気のせいかもしれませんが、6月23日の午後8時ころ、自室で作業をしていたときのこと。ふとリビングへと目を向けると、消灯しているはずのリビングと玄関が明るくなっていました。時間にして数秒ほどですが……。
 また、あいかわらず動物らしき影がベランダを横切ります。

◇ 第2回目の診断
挿し絵  前回霊的な現象が起こりやすい日時を計算するとき、私は占星術のミッドポイント法に、自分の経験を重ねて10の候補をあげました。実はこの中で、もっとも遭遇する可能性が高いのは、6月22日の夕刻だったのです。23日の午後にそういう経験をされたということで、あなたの傾向が少しわかってきました。今度は7月19日から20日あたりに注目してください。
 もう1つ重要なことですが、リビングの照明が明るくなっていたということは、霊的な現象というより、強い電場が発生していたと考えるほうが自然です。おそらくあなたは 体質的にそういうものに敏感なのでしょう。現在のマンションの周辺に高圧線がないか、などにも注意してください。
 もともとあなたはそういう現象に敏感で、それが現在のお住まいで増幅されたのだというのが、いまのところ私の結論です。絶えられないほどそうした現象が強くなったら、引っ越すのがベストでしょう。そうでなければもう少し様子を見ましょう。

◇ クライアントの返答 ◇
 2回目の診断をしていただいた日。自宅に戻った僕はインターネットを始めようとしたのですが、なぜかターミナルアダプタがエラーを起こしており、1時間ほど電話が不通になりました(7月4日の午後9時〜10時ころ)
 TAを初期化することで解決しましたが、原因は不明です。なお、ファックスの受信記録から、夕刻までは問題なく動いていたことがわかっています。
 誤動作といえば、バイト先のパソコンに手を触れたら電源が入ったことが2度ほどあります。もちろん、電源スイッチを押したのではありません。これらもやはり、電場が関係しているのでしょうか?

◇ 第3回目の診断
 そうなんですよね。TAが壊れちゃうと、電話できなくなるのが困ります。涼風さんだから自分でなんとかできたけど、お年寄りだったらお手上げでしょうね。それはともかく、今回のメールではっきりしました。あなたは典型的な電気人間――大量の静電気を蓄積する人――です。もう間違いありません。
 ぼくも、パソコンに触れただけでスイッチが入った経験があります。そのときは家族がそばにいて、みんなびっくりしました。でもぼくや涼風さんだけでなく、実はたくさんの人が同じような体験をしているんです。ぼくの友人に、向井さんというロボット技術者がいます。プログラムについても詳しいので、企業のコンサルタントも引き受けていますが、触れただけで電源が入るという相談は、いままで何件も受けているそうです。しかも、どこででもそうした現象が起こるのではなく、電気人間がある特定の場所にいるときだけ、そのようなことが起こるのだそうです。(向井さんの電気異常体験は、「西谷史の世界」にふくまれる「西谷百物語」をごらんください。)  そうした電気異常を研究しているマイケル・シャリスというジャーナリストのレポートを読むと、電気人間はある日突然、なにかのきっかけで異常になってしまうことが多いようです。あなたの場合は、現在の場所に引っ越したことが、きっかけになったのではないでしょうか。事務所のパソコンを壊さないでくださいね。
 ただ、なぜあなたが猫の幻を見るか…ということには興味があります。一度BBSで、ほかの人々もまじえて、議論してみましょうか。