PSY事件簿
―― Xファイルの感電事件 ――

日刊スポーツより
 2000年7月31日午後0時40分ごろ、Xファイルの撮影現場で、撮影用に組まれた足場にいた制作スタッフが、4800ボルトの送電線に触れて、一人が感電死し、一人が全身やけどで重体。5人が足場から転落して重軽傷を負った。

■過去の事例――野外コンサートや、野外撮影での感電死がたまに新聞に掲載される。ぼくが一番鮮明に記憶しているのは、1970年代に『ユライア・ヒープ』というハードロック・バンドのベーシストが、コンサート中に感電死した事件だ。ぼくはこのグループが大好きで、自分もこのバンドの曲を演奏していたので、なおさらショックだった。そして死亡したベーシストに替わって参加した新しいベーシストが、また感電死するにおよんで、『ユライア・ヒープ』は『呪われたバンド』として定着した。


―― 分析1 ――
 現代社会ではぼく達は、電界の中で生活している。人間の身体に電気抵抗があるから普段は感電しないが、雨に濡れたときはこの抵抗値が下がる。一般にはずぶ濡れの状態で、抵抗は500オームになるといわれる。
 電流=電圧/電気抵抗 という法則があるから、濡れた身体では、100ボルトの電圧でも0.2アンペアの電流が流れる。そして人間は、わずか0.02アンペアで死亡する可能性がある。だから家庭用の電気でも十分に感電死するし、コンサートで200ボルト以上の電源を使っていれば、なおさら危険性は高まる。まして、4800ボルトの電圧を浴びたらひとたまりもない。
 しかしこの場合、ヤグラの上で撮影していたのは幸いだった。通常高電圧で感電すると離脱不可といって、筋肉が痙攣して動けなくなる。5人の撮影スタッフは、転落することによって電源から離脱することができたので助かったのだろう。


―― 分析2 ――
 Xファイルがある種危険なテーマを扱っているために、なおさらこの事件は、センセーショナルな扱いを受けた。またユライア・ヒープも魔術をテーマにした曲を演奏して、カルトバンドと呼ばれていたために、ファンの中には起こるべくして起こった事故だという人もいた。
 ぼく自身の体験したことだが、『東京SHADOW』というホラーゲームを撮影したとき、現場に持ち込んだ撮影用のβカム3台がすべて動かなくなり、女優さんのスケジュールを押さえていた事務所が、真っ青になったことがある。ただちに全員が東郷神社でお払いを受けたところ、翌日からの撮影は順調にいった。
 しかし、そもそもコンサート中の感電死というのは希なことだし、なぜそれが同じバンドで続けて起こるのだろう。また撮影中の感電死というのも、滅多にあることではない。なぜそれがXファイルで起こるのだろう。
 こわいこわいと思っていると、心理的に事故を誘発してしまうという説がある。たとえば『東海道四谷怪談』で頻繁に事故が起こるのは、おそらくそうだ。しかしそれだけでは、実際に感電事故が起こったり、ビデオカメラが壊れてしまう説明にはならない。ぼくは、人間は無意識のうちに身体の電気抵抗を変えたり、放電したりしてしまうのではないかという仮説を抱いている。
 Xファイルについては、いま一つ状況がはっきりしないが、まさか送電線に触れるようなヤグラの組み方はしないだろう。雷が落ちるように、放電現象が起こったと考えるほうが自然ではないだろうか。
 撮影カメラが壊れたり、コンサートでの感電事故はこれで十分に説明がつく。ちかごろ話題になっている、人が触るとパソコンに異常が起きるという事件なども、人が無意識のうちに放電してしまうと考えると、説明できる。
 人間と電気は、19世紀からずっと研究されてきたテーマだが、どうもはかばかしい研究成果があがらないのは、人間の電気特性を考慮しないからではないだろうか。